Wataru@理学療法士・予防運動アドバイザーのカラダブログ

理学療法士、予防運動アドバイザーのWataruがカラダについてのあれこれや健康情報をお伝えします。

理想的な立位姿勢とは?

今回は理想的な立位姿勢について考えてみます。

一般的には顎を引いて、両手はももの横に置き、胸を張って立つと言われているのではないでしょうか。

ヒトの解剖学的な特徴を踏まえて考えたとき、果たしてこのような姿勢は正しいのでしょうか?

  

サルとヒトの違いとヒトの特徴

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どんなものでもそのものの特徴を捉えるためには何かと比べなければいけません。

そのため、ヒトの特徴を考えていくときにも、ヒトだけを見るのではなく、他の動物と比較していくことが必要です。

そこでヒトと最も近縁な動物である類人猿とで比較してみると次のようなことがわかります。

 

顔面頭蓋に対して脳頭蓋が大きい

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チンパンジーの脳容量が約390ccであるのに対してヒトの脳の容量は約1300ccです。

その脳を収めておくためにも、脳頭蓋を大きくしています。

なお、脳が大きくなったことはヒトの大きな特徴ですが、直立二足歩行を始めてから約450万年ほど経ってから脳が大きくなったとされています。

 

大後頭孔が頭蓋骨の中央にある

大後頭孔とは、脳から伸びてきた脊髄が通る穴であり、その真下に背骨が連なっていきます。

ヒトの場合は大後頭孔が頭蓋骨の中央にあるため、頭を背骨の真上に乗せることができます。

類人猿の場合は大後頭孔が後ろにあるため、必然的に首の前方に頭がある形になります。四足歩行に適応していますね。

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奈良貴史「人類進化負の遺産」 

腰椎が前弯している

直立二足を獲得するためには背骨を重力に抗して立てる必要がありますが、そのため腰を伸ばして前弯を作る必要があります。

類人猿は腰は丸く、基本的には起きてこれませんが、直立二足歩行を練習することで腰椎の前弯ができたという報告もあります。

 

腕よりも足が長い

類人猿と比較してヒトの場合は足が長いです。

基本的に骨は合理的にできており、負荷がかかる部分が大きくなります。

腕が長い類人猿はナックルウォークや木の間の腕渡りが得意ですが、ヒトについては直立二足で歩くためにこのような形態になったと考えられます。

 

膝と股関節が伸びる

直立二足歩行をより効率的に行うために、股関節と膝関節が伸展してきます。

股関節および膝関節の伸展もヒト特有のものであるため、これができなくなることで様々な弊害が生じてきます。

例えば膝関節は屈曲位になってしまうと下腿が回旋しやすくなってしまうため、それによってアライメントの不良が生じることも多いです。

 

足のアーチがある

ヒトの足には土踏まず(アーチ)がありますが、これは類人猿にはありません。

ちなみに、ヒトにおいても足のアーチができるのは5歳ごろですので、歩いてすぐにアーチができるわけではないです。

直立二足歩行をするからこそ、衝撃吸収や効率的な力の伝達のために足の形が作られていくのですね。

 

足の親指(母趾)が正面を向いている

類人猿の足はどちらかというと手の形に近く、樹上で生活するのにも有利なようになっています。

ヒトにおいては、足の親指は正面を向き、 歩く際にしっかりと足の指で地面を蹴れるように適応しています。

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加辺憲人「足趾の機能」

 

 

理想的な立位姿勢

ここまで、ヒト特有の骨格を見てきました。

これらを踏まえて、理想的な姿勢と言えるのはまず何と言っても体を重力に対して逆らいしっかりと伸ばすことが重要になります。

このことが衝撃を緩衝するために背骨のS字カーブや腰椎の前弯をしっかりと保ち、その上で頭は背骨の真上に位置させ、足のアーチもしっかりと上がってきます。

抗重力伸展やエロンゲーションとも呼びますが、この体の軸を伸長させることがとにかく重要になります。

普段から、座っている時間が長かったり、パソコンやスマホの操作が長時間になってしまうことによりこの軸の伸長が不足してしまうと当然様々な不調が体に生じます。

作業を行う際などにも出来るだけ小まめに立ち上がって体を伸ばすような習慣を持つことが重要ですね!

 

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