トレーニングのためのニーズ分析
スポーツなどを行なっていれば、パフォーマンスをアップしたいと望むことは当然と思います。
競技種目に特化した練習はもちろんですが、基本的な身体作りとしてのトレーニングも当然必要です。
トレーニングには様々な種類がありますが、今回から数回に渡って最もベースとなる筋力強化のためのレジスタンストレーニングにフォーカスしてお伝えします。
ベースの筋力がついてくることで、そこから競技レベルに持っていくためのファンクショナルトレーニングやコレクティブエクササイズ、ボディーワークにも応用していくことができます。
目次
トレーニングのための7つのステップ
レジスタンストレーニングのプログラムを決めていくためには次の7つのステップに沿って考えていくとスムーズです。
⒈ニーズ分析
⒉エクササイズ種目の選択
⒊トレーニング頻度
⒋エクササイズの順序
⒌トレーニング負荷と反復回数
⒍トレーニング量
⒎休息時間
基本的には適切な評価がベースになってきますが、エクササイズ処方までの流れも含めて見ていくことが重要です。
今回はこのうち、まずはニーズ分析にフォーカスしてお伝えしていきます。
ニーズ分析(評価・アセスメント)
ニーズ分析は、競技の評価と各個人の評価の2つが重要です。
競技の評価
まずは行う競技特有の性質として以下の項目を明確に示すことがポイントです。
・競技ごとの一般的な生理学的およびバイオメカニクス的特性
・よく起こる怪我の部位
・ポジションに特有の性質
まずは競技に応じてそのパフォーマンス中の動作を分析することで、各動作の特徴や運動パターン、関与する筋を明確にします。
また、競技中のどのパフォーマンスの要素を改善させていきたいかに応じてその要素を分析することが必要になります。
その上で、筋活動として必要な要素(パワー、筋力、筋肥大、筋持久力)の優先度を決めて行きます。
例えばテニスを例とすると、動きの面だけで考えると、回旋動作が鍵になります。
トラブルで多いのは腰や膝、肘などです。
いずれも回旋のストレスを各関節が受けすぎてしまうことが考えられます。
共通して言えることとして、ヒトの動きの回旋運動のポイントは胸椎と中枢の関節に当たる股関節・肩関節です。
そこで胸椎の可動性から連動して股関節・肩関節が対応していけない結果、中間関節である腰部や膝、肘に影響が出るケースが多い印象です。
パフォーマンスの中で胸椎の動きが適切に出ているかどうか、腰や膝、肘に回旋ストレスがかかっていないかどうかを評価する必要があるでしょう。
各個人の評価
競技を行う個人の特性をしっかりと把握しましょう。
・今までのトレーニング歴
・運動歴、スポーツ歴
・姿勢や骨格特性
・過去の怪我や障害
・パフォーマンス目標、本人のニーズ
特に3つ目に挙げた、骨格特性は非常に重要な要素となります。
この部分が不明瞭だと、怪我のリスクやパフォーマンスを発揮するために必要な要素を正確に伝えることが難しくなってしまいます。
基本的には下記にあげる要素は必ずピックアップするようにしています。
・大腿骨頸部の前捻角
・股関節および寛骨臼の形状(FAIの有無)
・脊柱のアライメント(ニュートラルかフラットスパインか、側弯の有無)
・脚長差
・腸骨の偏移(AS、PI)の有無
・Laxity(関節弛緩性)の有無
・頭蓋骨の形状
・咬合
いずれも、今までの生活やスポーツ歴に応じて形成されてしまっている部分も多いので、自身の骨格を知った上で適切な動き方、トレーニング時のアライメントなども変わってきます。
ここが明確になれば、同じエクササイズでもより効果的かつ効率よくトレーニングを進めることができます。
まとめ
運動指導の結果はアセスメントが8割を占めると言っても過言ではありません。
ここがおろそかになってしまえば、どんな素晴らしいプログラムも的外れになってしまいます。
的確にアセスメントを行った上で、必要なエクササイズの提案に進んでいきましょう。
理想的な立位姿勢とは?
今回は理想的な立位姿勢について考えてみます。
一般的には顎を引いて、両手はももの横に置き、胸を張って立つと言われているのではないでしょうか。
ヒトの解剖学的な特徴を踏まえて考えたとき、果たしてこのような姿勢は正しいのでしょうか?
サルとヒトの違いとヒトの特徴
どんなものでもそのものの特徴を捉えるためには何かと比べなければいけません。
そのため、ヒトの特徴を考えていくときにも、ヒトだけを見るのではなく、他の動物と比較していくことが必要です。
そこでヒトと最も近縁な動物である類人猿とで比較してみると次のようなことがわかります。
顔面頭蓋に対して脳頭蓋が大きい
チンパンジーの脳容量が約390ccであるのに対してヒトの脳の容量は約1300ccです。
その脳を収めておくためにも、脳頭蓋を大きくしています。
なお、脳が大きくなったことはヒトの大きな特徴ですが、直立二足歩行を始めてから約450万年ほど経ってから脳が大きくなったとされています。
大後頭孔が頭蓋骨の中央にある
大後頭孔とは、脳から伸びてきた脊髄が通る穴であり、その真下に背骨が連なっていきます。
ヒトの場合は大後頭孔が頭蓋骨の中央にあるため、頭を背骨の真上に乗せることができます。
類人猿の場合は大後頭孔が後ろにあるため、必然的に首の前方に頭がある形になります。四足歩行に適応していますね。
腰椎が前弯している
直立二足を獲得するためには背骨を重力に抗して立てる必要がありますが、そのため腰を伸ばして前弯を作る必要があります。
類人猿は腰は丸く、基本的には起きてこれませんが、直立二足歩行を練習することで腰椎の前弯ができたという報告もあります。
腕よりも足が長い
類人猿と比較してヒトの場合は足が長いです。
基本的に骨は合理的にできており、負荷がかかる部分が大きくなります。
腕が長い類人猿はナックルウォークや木の間の腕渡りが得意ですが、ヒトについては直立二足で歩くためにこのような形態になったと考えられます。
膝と股関節が伸びる
直立二足歩行をより効率的に行うために、股関節と膝関節が伸展してきます。
股関節および膝関節の伸展もヒト特有のものであるため、これができなくなることで様々な弊害が生じてきます。
例えば膝関節は屈曲位になってしまうと下腿が回旋しやすくなってしまうため、それによってアライメントの不良が生じることも多いです。
足のアーチがある
ヒトの足には土踏まず(アーチ)がありますが、これは類人猿にはありません。
ちなみに、ヒトにおいても足のアーチができるのは5歳ごろですので、歩いてすぐにアーチができるわけではないです。
直立二足歩行をするからこそ、衝撃吸収や効率的な力の伝達のために足の形が作られていくのですね。
足の親指(母趾)が正面を向いている
類人猿の足はどちらかというと手の形に近く、樹上で生活するのにも有利なようになっています。
ヒトにおいては、足の親指は正面を向き、 歩く際にしっかりと足の指で地面を蹴れるように適応しています。
理想的な立位姿勢
ここまで、ヒト特有の骨格を見てきました。
これらを踏まえて、理想的な姿勢と言えるのはまず何と言っても体を重力に対して逆らいしっかりと伸ばすことが重要になります。
このことが衝撃を緩衝するために背骨のS字カーブや腰椎の前弯をしっかりと保ち、その上で頭は背骨の真上に位置させ、足のアーチもしっかりと上がってきます。
抗重力伸展やエロンゲーションとも呼びますが、この体の軸を伸長させることがとにかく重要になります。
普段から、座っている時間が長かったり、パソコンやスマホの操作が長時間になってしまうことによりこの軸の伸長が不足してしまうと当然様々な不調が体に生じます。
作業を行う際などにも出来るだけ小まめに立ち上がって体を伸ばすような習慣を持つことが重要ですね!
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