咬合(咬み合わせ)と姿勢の関係
本日は咬み合わせと姿勢の関係についてお伝えします。
姿勢を考える上で、あまり咬み合わせにまで目がいかないことも多いかと思いますが、
非常に影響の大きい部分になりますので、整理してみたいと思います。
目次
1.顎関節周囲の解剖学的特徴
顎関節は1つの下顎骨に左右一対の関節がついているという構造の部位です。
このような部位は他にも以下のものがあります。
・椎間関節(脊柱)
・胸鎖関節(胸骨と鎖骨)
・胸肋関節(胸骨と肋骨)
・仙腸関節(骨盤)
いずれも身体の左右のバランスをとり、中心を作るために重要です。
また、下顎と舌の付着点である舌骨、さらに肩甲骨は筋肉を介して連結しています。
綱渡りをするときに両手でバランスを取るように、肩甲骨も身体の左右のバランスをコントロールするために重要です。
下顎、舌骨、肩甲骨の関係性をしっかりとチェックすることも姿勢を整える上で欠かせないですね。
また、強い負荷がかかってくる部分ですので、緩衝材としての関節円板も持っています。
顎関節に負担がかかってくると、この円板がずれることによって、音がなる(クリック音)こともあります。
2.不正咬合とその原因
不正咬合とは
不正咬合とは何らかの原因で歯や顎、顔面の形に異常をきたして正しい咬み合わせが得られなくなった状態のことです。
下記のようなタイプがあります。
・上顎前突(出っ歯)
・上下顎前突
・下顎前突(受け口)
・空隙歯列(すきっ歯)
・過剰咬合
・開咬
・叢生(乱ぐい歯、八重歯)
・交叉咬合
これらの結果、顎が左右にずれるなどして咬み合わせの左右差ができます。
それにより、身体全体の歪みや姿勢の非対称に繋がるケースも非常に多いです。
不正咬合の原因
不正咬合の原因はいくつかありますが、今回は2つ取り上げます。
①口呼吸
特に口周りの表情筋の弱化により、無意識に口が開いてしまうといったことが起きます。
報告では、口呼吸を行う日本人は増えており、大人の約半数、子どもの8割が口呼吸の癖があるとされています。
口呼吸を行ってしまうことで、口の中が乾燥し、風邪やアレルギー症状を引き起こすことにも繋がってしまったり、また虫歯にもなりやすくなります。
また、喉の奥にあるリンパ組織であるアデノイドが肥大し、顔つきが変わってしまうこともあります。
さらに、口呼吸により睡眠の質が悪くなることも指摘できます。
いびきや睡眠時無呼吸症候群の方の多くが口呼吸が指摘されており、それによって深い睡眠が得られない結果となってしまいます。ただ、この根本的な原因は次に述べる舌の位置によるものが大きいです。
②舌の位置
舌の正しい位置について考えたことがありますでしょうか?
舌は通常、上顎についている状態が基本になります。
厳密には上顎の硬口蓋と呼ばれる箇所でぴったりと舌が収まるようになっています。
また、舌が上にあることで、頭の重さを支えることができるようになります。
試しに舌を上げた状態で下を向いてみたときと、舌を下げた状態で下を向いてみたときと比べてみてください。
おそらく舌を下げた方が頭が下がりやすいはずです。
すなわち、舌が下がってしまっていると頭も下がりやすく、猫背などの不良姿勢に繋がり、結果として首コリや肩コリの原因になることも多いです。
なお、舌の位置と口呼吸も関係しあっており、口が開くと当然舌は下方へ下がるため、口呼吸の修正が舌を正しい位置に置くためにも重要となります。
不正咬合による姿勢への影響
不正咬合は私たちの姿勢にも大きく影響しています。
まず、口呼吸をすることで舌が下方に下がります。
その結果、気道が狭くなり息がしづらくなるため、この気道を確保するために首を後ろに倒し下顎を突き出すようになります。
仰向けで気道確保の姿勢をとるのと同じことが起きます。
首が後ろに倒れると5kg近くある頭を支えられないため、バランスをとるために頭を前に出し、その結果首の弯曲が失われてまっすぐになったり(ストレートネック)、猫背になっていきます。
頭が前に出るとその分、首への負担は増えます。
(首が15度曲がると約12kg、30〜45度では約20kgにも!)
ストレートネックや猫背が肩や首、腰に負担をかけることは明白ですが、その原因に咬み合わせといった可能性も大いにあるということです。
このように、咬み合わせと姿勢には多くの関連があります。
咬み合わせが原因で悪い姿勢にならないための注意点や解決方法についてはまた改めてお伝えします!
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脚の長さの左右差に注意すべし
本日は脚の長さの左右差についてのコラムです。
目次
1. 脚の長さの左右差とは
医学的には脚長差と呼ばれていますが、左右の脚の長さに3cm以上差がある場合のことを指します。
その場合は、補高といって、靴底を少し高くして調整することが多いですが、1cm未満の左右差については許容範囲内とされ見逃されているケースがほとんどです。
しかし、1cm以内の左右差でも実際に歩いた時の身体の崩れに影響したり、それが長時間積み重なった結果、身体のあちこちにストレスが重なり、痛みや側弯などの変形の原因となることが多いです。
実際の研究報告でも1cm以内でも脚長差があることで、筋力の左右差ができたり、筋電図上で筋活動の左右差が認められたと言われています。
実際に現場で側弯症の方を大勢見ていますが、非常に多くのケースで1cm未満の左右差を認めています。
脚の長さに左右差があると、骨盤の高さに左右差が生じ、結果として腰椎の弯曲を強めてしまうケースがほとんどです。
数mm単位からでも補高を行うことによって、腰部にかかっている過度なストレスが軽減することも多く経験しています。
2. 脚長差の分類
脚の骨の長さそのものに左右差が生じる「構造的脚長差」と股関節の左右への開き具合の差や骨盤の高さが原因で見かけ上左右差が生じる「機能的脚長差」があります。
構造的脚長差が起きる原因としては、股関節をはじめとした下肢の障害によるものに加えて、成長期に下肢にかかるストレスの左右差も原因の1つと考えられています。
成長期に存在している成長軟骨はHeuter-Volkmann則という法則に従って成長します。
これは、成長軟骨への過度な負荷は骨の成長を抑制し、適度な負荷は骨の成長を促進するという法則です。
実際に陸上競技選手(短距離、長距離、跳躍選手)の脚長差を調査した結果、90%以上に脚長差を認めたとの報告もあります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm1949/35/4/35_4_200/_pdf
3. 脚長差への対処
機能的な場合は、見かけ上なので、適切なエクササイズの指導や身体の動かし方の癖の改善で解決するケースも多いですが、構造的な場合はやはりインソールのような道具で補填する必要があります。
実際にどの程度補填するべきかは、各種整形外科的テストによるチェックと姿勢・動作・歩行を総合的に評価した上で決定していきます。
脚の長さを的確に評価し、対処できるために以下のページの内容もオススメです!